図書館が小さな地域の経済循環を起こし、人材育成もできるイノベーションの場になる@宮崎県椎葉村
日本三大秘境・宮崎県椎葉村にできた図書館「ぶん文Bun(ぶんぶんぶん)」を、司書の小宮山剛さんとともに作られた太田剛さんは、高知県の「雲の上の図書館」、栃木県の「ふみの森もてぎ」、北海道の「幕別町図書館」など、市民と作る図書館のコーディネートをされています。
全国の図書館で老朽化や統合がすすみ建て替えのタイミングがきている。とはいえ建物をつくって、引越業者に丸投げして、相見積とって段ボール代値切って…それで予算は助かるかもしれない、でも図書館は誰のものだろう?
本当にそれが市民のためになっているのだろうか?
「少しやり方を変えるだけで、すごくおもしろいことができるはず」という太田さんの言葉に、私はノックアウトされて、「ぶん文Bun(ぶんぶんぶん)」とのご縁が生まれたのでした。
図書館がどうやって作られるか、どう本を選ぶか、発注するか、本棚を作るか、貸りにきた方がどう過ごすか、司書は市民の方とどうコミュニケーションをとるのか、「図書館」がどんな場として地域で活用されるのか…
恥ずかしいことに私はまったく知りませんでしたし、考えたこともなかったのです。
太田さんいわく、たとえば現状のシステムでは、図書館が本を発注するのは専門の業者しか使われてないため、自治体の数千万、数百万のお金が東京の業者に吸い取られている。また貸し出すために書籍にカバーをかける、それも業者に発注とセットでなくてはならない。地元の本屋をはじめとする、地元との関係は切れている。
太田さんがはじめて手掛けられた幕別町図書館は、既存のシステムを変え(勇気のいること!)地元の本屋さんから本を購入し、カバーをかける作業をB型福祉施設に発注をして、雇用とお金の循環を生み出し、さらにこれを学校の図書室にもひろげました。
図書館のような公共の社会の役に立っていることは、働く人たちにとっても誇りをもてること。だんだんと働くひとたちが変わっていき、事業は拡大し、また経験をもとに一般就労をされる利用者も出てきた。
図書館が小さな地域の経済循環を起こしながら、人材育成もできるソーシャルビジネスであり、イノベーションの場になることを証明したわけです。
また太田さんが手がけられる図書館は、ワークショップを実施して選書に市民がかかわったり、バケツリレー形式で自分たちで本の引っ越しをしたり、つまり「私たちの図書館」のためのサポーター組織を育てておられます。
たとえば幕別町図書館では、サポーターが予防医療や医療負担の削減といった自治体の抱える問題に図書館が積極的に関わっていっているのです。
図書館にストレス測定器(血圧測定など)を置き来館者に測定してもらい、数値が高かった場合にはストレスケアのために用意している500 冊ほどの本の中から、医療系、癒しなどの本を司書がレファレンスする。本を 2 週間後に返しにくるため、そこでまた測定すれば,定期的に継続して測れる。
大切なのは測定時のサポーターとの会話のなかで、健康以外の貧困やいじめ、DVといった多様な課題が浮き上がってくること。
それらを察知して行政の窓口につなげるソーシャルワーカー的な役割をになう、図書館がまちづくりの中心になるすばらしい取り組みは、多くの地域にとって希望になると思っています。