くらしの循環を再構築して失われた里山を取り戻す 糸島ジビエ工房 TRACKS
うきは市議員・組坂さんと、エネルギーと食の自立に取組む宗貞さんとご一緒して、糸島のジビエ専門の食肉工房「TRACKS」をじっくり視察させていただきました。 ㅤ
TRACKSは、福岡・糸島に拠点を構える猟師たちの集まりです。
狩猟で獲れた野生肉を加工・流通・販売し、ジビエ料理店も営業。
獣害問題の解決のため、ジビエの日本全体を一地域とした地域活性、および地産地消の推進普及を目指しておられます。
ㅤ
近年、猪や鹿、サルが人間の住んでいるエリアに出没して畑を荒らす。
林業でも長年育ててきた杉やヒノキの樹皮が剥かれて、木材としての価値がなくなってしまう、といった被害が急増しています。 ㅤ
2010年度の農作物の被害は239億円 → 2019年度は158億円、被害面積は約11万㌶ → 約4万8000㌶(農水省 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/)と数字は一見減っているように見えますが、実は農林業から撤退したり、被害が出ても諦めて申告しなくなったりしているケースが増加しているからと伺いました。 ㅤ
被害が顕著になってきたのは住民の高齢化、耕作放棄地の増加で山のメンテナンスが行われず、さらに狩猟者(特に猟銃)の高齢化で増えすぎた動物の駆除がまにあわなくなり、エコシステムが壊れてしまったからですが、江口さんいわく「猟師が食えないというのも大きな課題です」とのこと。
野生動物の捕獲数は2010年83万7,100頭 →2019年124万3,000頭で増えています。
そして若い方を中心に狩猟者の数も増えているそうですが、実際に活動している人はその1割程度。 問題は、獲った後の行き先がないのです。
言いかえれば、肉が食べられるまでになるまでのハードルがとても高い。 ㅤ
まず仕留めてから短時間で解体しなければなりませんが、個体出荷から精肉までをコントロールできる家畜と違って、罠猟は天候に左右されるうえ、基本的に兼業のため毎日、のような定期的な見回りが難しい。
そして解体しようにも、加工できる人と工場がそもそも少ない。そのため、当然コストが上がります。
捕獲された動物に対して、食品として利用されるのは1割以下だとも聞きました。
それ以外は、埋めたり、焼却せざるをえない。モチベーションが上がるはずがありません。 ㅤ
基本的に狩猟期間は11月15日〜翌年2月15日で、駆除の期間も自治体によって異なる。駆除をすると猟友会経由で自治体から報奨金(糸島の場合イノシシ一頭で9,000円)がでるそうですが、とはいえ、これだけで食べていく、というのは現実的ではありません。 ㅤ
江口さんもその課題は痛感していたけれど、踏み込めなかった時間が長くありました。
しかしある農家のおばあちゃんからイノシシ駆除を依頼され、荒らされた畑を前に涙を流される姿を見て、自分がやらなくては、と心をきめられたのだそうです。 ㅤㅤ
そんな江口さんの志のおかげで、少しづつ加工や流通がすすみ、こうやって私たちも気軽に手に入れることができるようになりました。
ジビエが「珍しい」という扱いではなく「当たり前」の文化の普及を目指しておられます。
山を守ることは狩猟文化を受け継ぐこと。自然と人間の関係について考えることでもあると。 ㅤ
この日BBQでいただいたイノシシを解体してくれたのは、昨年公務員から転職したという30歳の猟師さん。
お2人のお話を伺いながら肉を味わい、「ジビエ」というちょっと非日常的な言葉の響きと、「里山」という私たちが生きる基盤(環境)の存続問題が、かなり乖離していることをあらためて感じました。 ㅤ
変化を起こすことは、時間がかかることではあると思いますが、私も食べる、買う、伝えるなどのできることを行っていきたい。
そして組坂さんも、宗貞さんも、それぞれのお立場でこの問題に取り組んでいかれると思います。
快く視察を受け入れてくださったTRCKSさんに、感謝いたします。 ㅤ ㅤ
糸島ジビエ工房 TRACKS
福岡県糸島市二丈片山1-1
092-332-9818
https://gibiertracks.com/ ㅤ
焼ジビエ 罠 警固 (ヤキジビエワナ) ※緊急事態宣言につき休業中
福岡市中央区警固2-16-20 アサヒプラザ赤坂 103-B
092-734-2277
https://www.hotpepper.jp/strJ001225596/ ㅤ ㅤ